戦略案はまずは4つの視点で分類してみよう

SWOT分析によって、自社のおかれている環境の状況、強み、問題点を明らかにし、TOWS分析によってその対策案(戦略案)について抽出することができる。

しかし、これらの分析によって抽出された戦略案を全て実行するのは実質的に不可能だ。

なぜなら、戦略とは方向性を示すものであり、TOWS分析によって抽出された戦略案が、真逆の方向を指し示していることが多いからだ。

また、方向性を一つにすることで効果の最大化が実現するのに、真逆でなくても複数の方向性を示す戦略がとられると、それぞれの戦略が効果を打ち消し有ってしまい、目標を達成できなくなることが多いものだ。

しかも、複数の戦略の同時採用は、経営資源を分散化させてしまい、効果を最大化することができない。

 

したがって、戦略は複数の案を整理し、不整合の起きないように、可能ならば、それらが互いに相乗効果を生み、より高い効果を発揮できるように選択することが求められる。

 

そんなとき、BSC(バランス・スコアカード)のフレームワークでは、戦略を複数の視点で分類することを提案している。

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基本形としては、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「人材と変革の視点」の4つだが、開発者のキャプラン先生や、日本の第一人者である吉川武男先生はこの4つでなくても、自由に設定し、3つに減らしたり、5つに増やすなどしても構わないとしている。

 

だが、筆者が手伝ったことのある企業の事例を考えると、独自の視点の導入や、数の増減をするのは非常に難しいというのが実感である。

初めて作るのであれば、先に述べた「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「人材と変革の視点」の4つに分類することをオススメする。

 

方法は簡単だ。

TOWS分析などによって作った戦略案を、これは「財務の視点」これは「顧客の視点」・・と分類すればよい。

もし、分類する中で当てはまる戦略が存在しない場合は、その視点で採用できそうな戦略案を新たに検討し、追加すれば良い。

この時点では戦略案は絞り込まず、ただ分類をして、4つの視点で漏れがないかを明確にすればよい。

 

なお、この4つの視点で考えるというのが、BSC(バランス・スコアカード)の胆の一つだろう。

BSCが作り出された背景を少し説明しておく。

 

1980年代後半から、1990年代前半にかけて、日本企業は世界の経済を席巻していた。

特に米国企業は日本企業との競争になったとき、その多くが苦戦し、負けてしまうと言う状況であった。

 

当時の米国では、企業が優秀かどうかを判断するのは、決算書によってのみ行うのが一般的だったという。

決算書を見る限り、米国企業の方が経常利益を多く生み出し、経営としては良い経営をしているように見えている。

日本企業は利益はそれほど大きくないから、決して優秀とは言えないと思われていた。

ところが、優秀な米国企業が日本企業に勝てないのである。

 

そこで、米国では日本企業の経営がどんなものか?を徹底的に分析した。

その結果、日本企業は米国の常識ではあり得ない経営評価方法をとっていたことを発見する。

それが、決算(財務)の視点だけでなく、顧客の視点、業務プロセスの視点、人材と変革の視点などで、企業の発展があれば、財務の視点での評価が低くても、良い経営であると見なしているということだ。

 

例えば、経常利益は出なかったが、

  • 新たなマーケットの開拓が実現し大きな成果があった(、顧客の視点)
  • 改善活動が大きく進展し、作業効率が格段に上がった上に、品質管理能力が向上した(業務プロセスの視点)
  • 社員が育ち、サービスレベルが向上した(人材と変革の視点)

など、財務以外の成果を評価していることが、米国の経営学会では大きな衝撃だったらしい。

 

そこで、米国ではこの日本的な経営手法を米国企業がシステマチックに導入し、日本企業に勝てるようにしようとしてBSC(バランス・スコアカード)考案されたという。

 

経営に関するフレームワークや、手法、ノウハウは、次々と日本に紹介され話題となるが、定着するものは決して多くはない。

 

そうしたものを活用し威力を発揮するには、それらを開発した国の社会的背景、文化的背景を前提としていることが多い。

ところが、主として欧米で開発される経営手法、ノウハウは、欧米の社会構造、文化的背景を前提としていることが多く、日本のそれとは大きく異なることが多いのである。

 

しかし、上述のような経緯から生まれたBSC(バランス・スコアカード)は、日本的経営を体系的に行うためのフレームワークだから、日本企業がこれを導入するのは、極めて親和性が高く、導入、定着しやすいという特徴がある。

 

実際、多くの企業で導入の支援を行ってきたが、どこの会社でもスムースに導入できているのでオススメする。

なお、BSC(バランススコアカード)の作り方としては、以下の書籍が最もわかりやすい


残念ながら絶版となっているようなので、中古等で入手してもらうしかないが、日本の第一人者である吉川武男先生が、日本各地でおこなったセミナーの内容と、そのまま同じ内容がより詳細に記載されていて、使用する図表関係も一通り掲載されているので、使いやすい。

オススメの一冊である。

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岡本 興一

クライアント経営者からは「カウンセラー」と呼ばれている自称「IT活用コンサルタント」。 ホームページ制作の依頼があっても、経営改善のための社長カウンセリングが始まり、なかなか制作が始まらないということで有名。 1971年生まれ。国立大阪大学工学部卒業。 ネットとITに詳しい経営者のサポーターで、仕組み作りのプロフェッショナル。 PHS販売数日本一の通販サイトや、圧倒的な売上を作るホテルのサイトなど多数プロデュースし、インターネットやITを経営に役立てるためのノウハウを常に仕入れ、実践しているだけでなく、経営に関する様々なノウハウ、メソッドの研究を行っており企業の「戦略」策定能力には定評がある。 保有資格:ITコーディネータ / CompTIA e-Biz+ / TCAE /公認情報セキュリティ監査人 / 情報セキュリティアドミニストレータ / CSMS(米国SEW認定SEO/SEM スペシャリスト)など多数
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明元素カウンセラー
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