顧客の絞り込み、捨てるとはどういうことか?

ここまで、経営戦略の立案において、まずは顧客ターゲットを絞り込むことから始めようと述べてきた。

そして、絞り込むということは戦略的に他の顧客を捨てることを意味するとも述べた。

こういうと、「ターゲット以外の顧客からの引き合いは(店舗に来たら)断るのか?」という質問が出てくることがある。

極論を言えば、「断る」ことになるのだが、誤解されることがあるので補足しておきたい。

顧客を捨てるとは無理をしないということ

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則ターゲット顧客を絞り込むと、おもしろいことに、ターゲットとして設定した顧客像とは異なる顧客層からの引き合い(来店)が、必ずやってくる。

「捨てる」ということは、こうした自社に興味をもっていただいた方々に対して「積極的に断る」という意味ではない。

たとえ、ターゲット像と異なる方(会社)であっても、自社の経営理念、ビジョン、戦略に沿う形で、自社で定めたターゲット顧客に対して提供する商品、サービス、接客と同じ事をする。

ところが、ターゲット像と異なる顧客の場合、自社の経営理念、ビジョン、戦略とは異なる要望を持っていることが多い。

「顧客を捨てる」とは、そうした方(会社)に対しては、自社の理念、ビジョン、戦略を曲げてまで受注をする必要はないということである。

顧客を絞り込むとは、ターゲットに設定したお客様には、徹底して自社の理念、ビジョン、戦略に基づき、お客様のニーズに応えていき、積極的に受注していくということである。

逆に捨てるとは、無理をしてまで積極的受注に向けた営業は行わないという意味である。

なぜ、捨てなければいけないのか?

「将来お客様になるかもしれないのに、捨ててもいいのか?」と言った人もいるが、捨てるの意味を勘違いされている。

お店の中に入ってきて欲しくない人達

リアルな店舗を例に考えてみよう。

S63-AMG-4MATIC高級外車を購入するため、メルセデスベンツの販売店に入ったとする。

すると、あちこち破れ、油やほこりで真っ黒になった作業着を来た人が店の中にいたらどう感じるだろうか?

おそらくは、「場違い」と感じるだろうし、もし、その販売店に、いつもそんな人がいたとすると、本来のターゲット顧客であるお金持ちは、他の販売店に行くのではないだろうか?

 

super-marcket食品を購入するためスーパーマーケットに行ったとする。

そこに、異臭を放つホームレスらしき人がいたとする。

果たして、気持ちよく食品の買い物をすることができるだろうか?

 

restaulantゆったりと食事を楽しみたいと考え、飲食店に入った時、その店の中を一目見て反社会的勢力の人達がたむろしていたとしたら、店をすぐに出て行くのではないだろうか?

 

こうした人達が、「将来のターゲット顧客になるかもしれない」という理由で、手厚い接客を行い、他のお客様と同じように、同じ場所で、同じ時間をかけて、丁寧にニーズを聞いていたとすると、本来のターゲットとして定めた大切なお客様達が寄りつかなくなってしまうのだ。

 

ターゲット外のニーズを拾うとターゲット顧客の不満足が拡大する

自社が行うべきことは、徹底して絞り込み、お客様の要望だからと言って、何でもやっていいわけではない。

自社の理念や、ビジョン、戦略に沿わないことまでやっていくと、本来のやるべきことに集中できず、結果的にターゲット像の不満足を呼び込んでしまい、差別化ができず、戦えなくなるからだ。

先の例で言えば、ターゲット外の「間違って」やってきた人達の要望は、とにかく安いモノが欲しいとか、騒ぎたいとか、本来の顧客へ提供しようとしていたサービス、商品、価値と異なるものを求められることが多い。

そうしたものにいちいち対応していると、本来のサービス、商品に対して避けるリソースを減少させてしまうことになる。

絞り込んだからこそ、徹底的にサービスや商品力を磨き、その分野だけは他社に負けない強みを作り出せるのに、分散してしまっては他社との差別化ができなくなる。

顧客は、強みを評価して戴いているからこそ選んで戴けるのだから、その強みがなくなると不満足が広がってしまう。

つまり、ターゲット外の顧客を捨てないということは、既存客の不満足を拡大させ、本来のターゲット像を逃がしてしまう、つかみ損ねてしまうことになるのである。

 

自社が絞り込んだお客様には徹底的に対応する。

戦略を変えず、ひたすら愚直にそれだけに集中する。

他の引き合いについては、自社のやりかたを曲げてまで対応しない。

それが、絞り込んだ顧客をつかみ、増やし、収益を上げていくことにつながるのである。

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岡本 興一

クライアント経営者からは「カウンセラー」と呼ばれている自称「IT活用コンサルタント」。 ホームページ制作の依頼があっても、経営改善のための社長カウンセリングが始まり、なかなか制作が始まらないということで有名。 1971年生まれ。国立大阪大学工学部卒業。 ネットとITに詳しい経営者のサポーターで、仕組み作りのプロフェッショナル。 PHS販売数日本一の通販サイトや、圧倒的な売上を作るホテルのサイトなど多数プロデュースし、インターネットやITを経営に役立てるためのノウハウを常に仕入れ、実践しているだけでなく、経営に関する様々なノウハウ、メソッドの研究を行っており企業の「戦略」策定能力には定評がある。 保有資格:ITコーディネータ / CompTIA e-Biz+ / TCAE /公認情報セキュリティ監査人 / 情報セキュリティアドミニストレータ / CSMS(米国SEW認定SEO/SEM スペシャリスト)など多数
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