顧客の絞り込みができなければ経営理念を見直してみよう

先日の記事では、経営戦略をたてるときに迷いが生じたり、上手く戦略を組み立てる事ができない場合の多くは、「顧客が誰かが定まっていない」=「『顧客の視点』の戦略が定まっていない」ことが原因であると述べた。

顧客が誰か?を明確にすることで、何を提供すべきか、どうやって提供すべきか?などが順番に決まってくるのだ。

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ところが、顧客を決めるということは、顧客を絞ることであり、ターゲットとならない顧客は捨てるということでもある。

この「捨てる」ことができずに戦略が定まらないことが多いのだ。

どうしても顧客を絞れなかったら???

「そうは言ってもお客様を絞るなんてできないよ・・・」とおっしゃる経営者には、次のような話をしている

まずは経営理念を見直してみましょう。

自社の経営理念をよく読み返してみましょう。

中小企業同友会では、「経営理念とは会社の存在理由・存在目的」と教わる。

理念を達成するために企業は存在しているということだ。

そのため、理念としては「どんな人に、どんな風になって欲しいのか?」という思いが込められているはずだ。

そのため、理念を見直すと、自社のお客様の姿、お客様にしたいのはどんな人たち(会社)なのかが見えてくるのである。

実際、過去の経験から言えば、経営理念をきちんと定めている中小企業の場合、8割程度の会社はこの理念の見直しで顧客を絞ることができてくる。

絞り込めない場合は、顧客を複数設定!

理念を見直したけれど、やっぱりお客様は絞れません・・・という方もいらっしゃる。

これは経営理念の抽象度が高すぎて、どんな人が幅広すぎる場合や、残念ながら、理念制定時に考えていた内容が受け継がれていない場合などに起きる。

こうした場合は、戦略案を複数設定し、その顧客毎に異なる戦略マップを作っていただくようにしている。

例えば、女性向けのビジネスをしている会社が、女性までは絞れたけれど、それ以上は絞れないという場合、次のような顧客案を作ってみるのだ。

  • 顧客A:50代以上の専業主婦
  • 顧客B:30~40代で仕事を持っている母親
  • 顧客C:20代で仕事をしている独身女性

これらは全て「女性」ではあるが、それぞれのニーズは異なるはずである。

ここから、バランス・スコア・カードにおける戦略マップを作成するのである。

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顧客Aに対する戦略マップ、顧客Bに対する戦略マップ、顧客Cに対する戦略マップ・・・という具合だ。

同じようなマップができたとき

同じようなマップになれば、それらを統合する形にすれば、ターゲット像がより明確になる。

顧客ターゲット像が明確になれば、再度自社の顧客とはどういう人たちか?を検討し、言葉で表せばよいのだ。

異なる戦略マップになったとき。

実はほとんどの場合、全く異なる戦略マップになる。

異なる戦略マップになるということは、自社の経営リソースが分散してしまい、どの施策(目標)も中途半端になるという意味ことになる。

大きな組織の場合は、部門a は戦略Aを、部門bは戦略Bを・・と、戦略別に担当組織を変えることで全部のターゲットを対象とすることが可能になる。

しかし、中小企業の場合は投入できる経営リソース(資源・資産)には限りがあり、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という格言のとおり、全ての果実を手にすることは困難だ。

したがって、戦略マップを並べた上で、次の観点からどのマップが一番効果的かを考え、採用すべきマップを考えるとよい。

全体の視点

他の戦略マップに好影響を与える戦略はどれか?(影響度が一番高い戦略はどれか?)
他の戦略マップと同じ戦略目標が最も多く出現する戦略マップはどれか?

財務の視点

最も粗利を稼ぐことができるのはどの戦略マップか?

顧客の視点

最も顧客数を獲得できるのはどの戦略マップか?
最も顧客満足度を獲得できるのはどの戦略マップか?

業務プロセスの視点

最も少ない労力で実現できる戦略マップはどれか?
最も難易度が低いプロセスになるのはどの戦略マップか?

人材と変革の視点

人材採用、育成の観点から最も短時間で成果を出せそうな戦略になっているマップはどれか?
最も難易度が低いプロセスになるのはどの戦略マップか?

これらを総合的に勘案して、この戦略マップが一番効果的であると判断するのである。

残念ながら、その選択の仕方として体系的、科学的に決める手法を筆者は知らない。

判断基準は複数あるものの、ターゲット設定については経営者以外の人では決めることができないし、決めるべきではない。

なぜなら、これは戦略の部分であり、会社の方針を決めるものだからだ。

経営者以外に、会社の方針を責任をもって決めることができる人は、社内には存在しない。

もし、それができる人が社長以外にいるなら、その人を社長にするか、分社して社長になってもらうべきだ。

中小企業に船頭は2人いては困るのである。

「決定するのが経営者の仕事」であり、経営者としての醍醐味であるので、社長がじっくり検討して決めるべきものである。

是非、楽しみながら決めて戴きたい。

 

捨てることが基本

新・片づけ術 断捨離 (マガジンハウス文庫)さて、このように顧客ターゲットを絞るとは、顧客を「捨てる」ということになる。

大げさに聞こえるかもしれないが、「捨てる」というのは「経営をスムースに進める」ため、「人生を楽しく過ごすため」の「基本的な考え方」でもある。

捨てない限り新しいモノは入ってこない。

捨てない限り、会社も自分も容量が増えることはないのだ。

しかし、思い切って「捨てる」ことによって、最小限の努力で最大限の効果を得る施策が決まってくる。

すると、従来の仕事のやり方で得られた果実よりも膨大な果実を得ることができるようになり、結果的に、自社で得られる果実の容量が増えてくるのである。

【決定版】 朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる! ―ガラリと生まれ変わった業種別30社の秘密―世間ではこうした考え方そのものや考え方を身につけ実践させるための方法を「断捨離」と呼んでいるし、一倉定先生は「環境整備」と名付けた。

戦略の策定とは、実はこの断捨離の考え方がなくては行えない。

逆に言えば、環境整備が行き届いている会社では、この戦略策定がスムースにできるとも言えるのだ。

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岡本 興一

クライアント経営者からは「カウンセラー」と呼ばれている自称「IT活用コンサルタント」。 ホームページ制作の依頼があっても、経営改善のための社長カウンセリングが始まり、なかなか制作が始まらないということで有名。 1971年生まれ。国立大阪大学工学部卒業。 ネットとITに詳しい経営者のサポーターで、仕組み作りのプロフェッショナル。 PHS販売数日本一の通販サイトや、圧倒的な売上を作るホテルのサイトなど多数プロデュースし、インターネットやITを経営に役立てるためのノウハウを常に仕入れ、実践しているだけでなく、経営に関する様々なノウハウ、メソッドの研究を行っており企業の「戦略」策定能力には定評がある。 保有資格:ITコーディネータ / CompTIA e-Biz+ / TCAE /公認情報セキュリティ監査人 / 情報セキュリティアドミニストレータ / CSMS(米国SEW認定SEO/SEM スペシャリスト)など多数
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